「はじめまして」

その一言から始まる、新たな出会い。初デートやお見合いの席で、目の前の相手に未来のパートナーの姿を重ねようとするとき、誰もが緊張と期待で胸をいっぱいにしていることでしょう。

清潔感のある、穏やかで優しそうな人。会話も弾み、特に嫌なところは見当たらない。過ごした時間は、決して悪いものではなかった。むしろ、楽しかったとさえ言えるかもしれない。

それなのに。

心のどこかで、冷静な自分が囁くのです。 「でも、ドキドキしない」「恋する気持ちには、なれないな…」

この、何とも言えない感覚。悪くない、でも「ピンとこない」。 あなたにも、そんな経験はありませんか?

多くの人が、この「ピンとこない」という壁に突き当たります。そして、「運命の人なら、会った瞬間にビビッとくるはずだ」という幻想に導かれるように、そのご縁を「なかったこと」にしてしまうのです。

「今回は、ご縁がなかったということで…」

そうやって、何度同じ道を繰り返してきたでしょうか。もし、あなたがこの「初見切り」を続けているのなら、少しだけ立ち止まって考えてみてください。その判断は、もしかしたら、あなたの人生で最も大切な出会いを、自らの手で手放している瞬間なのかもしれないのです。

一度会って「問題なし」と感じられたこと。それは、実はとてつもなく幸運なことです。膨大な数の人々の中から、あなたが不快感を抱かず、穏やかな時間を共に過ごせる相手に出会えた。それだけでも、奇跡的な確率だとは思いませんか?

その小さな奇跡の芽を、「ピンとこない」という一言で摘み取ってしまうのは、あまりにもったいない。 今日は、そんなあなたに、幸せな結婚を掴んだ多くの先輩たちが実践してきた、ある法則についてお話しさせてください。

なぜ、私たちは「ピンとこない」と感じてしまうのか?

そもそも、なぜ私たちは「ピンとこない」と感じてしまうのでしょう。 その背景には、いくつかの心理的なブレーキが隠されています。

一つは、「理想の王子様シンドローム」。 私たちは無意識のうちに、映画やドラマのような劇的な出会いを求めてしまいます。「会った瞬間に雷に打たれるような衝撃がなければ、運命の人ではない」と思い込んでいるのです。

もう一つは、「減点方式の罠」。 特に真面目で誠実な人ほど、相手を「結婚相手としてふさわしいか」という厳しい目でジャッジしがちです。小さな欠点や、自分の理想と違う部分を見つけては、心のチェックリストから減点していく。これでは、ときめきが生まれるはずもありません。

そして、最も根深いのが「自己防衛本能」です。 過去の恋愛で傷ついた経験から、私たちは臆病になっています。「この人を好きになっても、また傷つくだけかもしれない」と、心が無意識にブレーキをかけ、最初から深く関わることを避けてしまうのです。

これらのブレーキは、あなたが悪いわけでは決してありません。幸せになりたいと真剣に願うからこそ、慎重になり、心が硬くなってしまうのです。

しかし、その硬くなった心のままでは、どんな素敵な人が現れても、その魅力に気づくことはできません。大切なのは、その心の扉を、少しだけ開けてみる勇気です。

幸せへの扉を開く鍵、「スリーセット理論」

そこでご提案したいのが、心理学の知見に基づいた「スリーセット理論」です。

これは「単純接触効果(ザイアンス効果)」という心理法則を応用したものです。簡単に言えば、「人は、繰り返し顔を合わせる相手に対し、警戒心が薄れ、親近感や好意を抱きやすくなる」というもの。

初対面では興味が持てなかった相手でも、会う回数を重ねるごとに、不思議と印象が良くなっていく。この効果が顕著に現れ始め、相手への見方が変わり始めるのが、「3回」というタイミングなのです。

ですから、初対面で「ピンとこない」と感じた相手こそ、すぐに結論を出さずに、まずは合計3回会ってみる。これがスリーセット理論です。

具体的に、1回目から3回目で、心はどのように変化していくのでしょうか。

  • 1回目:『警戒』のステージ 初対面は、お互いに緊張し、自分を良く見せようと鎧をまとっています。ここで見るべきは、ときめきではありません。「人として、生理的に無理ではないか」「最低限の会話は成立するか」といった、ごく基本的な部分の確認だけで十分です。「悪くないな」と思えたら、それだけで100点満点です。
  • 2回目:『発見』のステージ 少し緊張がほぐれる2回目は、相手の「素」の部分が見え隠れし始める大切な時間です。趣味や仕事への価値観、友人関係など、少し踏み込んだ話をしてみましょう。すると、1回目では見えなかった相手の意外な一面や、自分との共通点を発見できることがあります。「この人、こんな面白いところがあるんだ」という小さな発見が、相手への興味を育む種になります。
  • 3回目:『親近感』のステージ 3回も会うと、脳は相手を「知らない人」ではなく「顔見知りの、安心できる人」と認識し始めます。警戒心という分厚い壁が取り払われ、相手の人間的な魅力がストレートに心に届くようになります。リラックスした雰囲気の中で、「この人と一緒にいると、心地良いな」「なんだか、また会いたいかもしれない」という、穏やかで温かい感情が芽生え始めるのが、このステージです。これが、本当の意味での「ご縁」の始まりなのです。

「ピンとこない」から始まった、ある女性の物語

「本当にこの法則に効果があるの?」と、あなたはまだ半信半疑かもしれません。 しかし、私たちはこの理論で、数え切れないほどの幸せな結末を見届けてきました。

以前、私たちの元へ相談に来られた30代の女性、Aさんもその一人です。彼女は婚活で出会った男性について、こう話してくれました。 「とても誠実で、良い方なのは分かるんです。でも、どうしても恋愛感情が湧かなくて…。どうすればいいか分かりません」

お話を聞くと、お相手の男性はまさに「悪くないけど、ピンとこない」の典型でした。Aさん自身も、ここで断ってしまえば、また振り出しに戻るという焦りを感じていました。

私たちは彼女に、この「スリーセット理論」をお伝えしました。 「騙されたと思って、あと2回だけ会ってみてください。それで何も感じなければ、その時はきっぱりと諦めましょう。その代わり、少しでも良い感情が芽生えたら、そのご縁を信じてみませんか?」

半信半疑ながらも、Aさんは私たちの言葉を信じ、デートを重ねることにしました。

2回目のデートで、彼は仕事の話を生き生きと語ってくれたそうです。普段は物静かな彼の、情熱的な一面にAさんは少し驚きました。 そして、運命の3回目のデート。休日の公園を二人で散歩しているとき、彼がふと、道端に咲く花を見て「綺麗だね」と微笑んだそうです。

その何気ない一瞬に、Aさんの心に、まるで温かい陽射しが差し込むように、ある感情が込み上げてきたと言います。 「ああ、私、この人の隣にいると、すごく安心する。この人の笑顔を、もっと見ていたい

それは、雷に打たれるような劇的な恋心ではありませんでした。しかし、穏やかで、深く、そして何よりも確かな「愛おしさ」でした。

その後の展開は、まさにトントン拍子。Aさんの心の扉が開いたことで、二人の距離は急速に縮まり、半年も経たないうちに、彼らは結婚を決めました。 「あの時、諦めなくて本当に良かった。『ピンとこない』の先に、本当の幸せがありました」と語る彼女の笑顔は、自信と幸福に満ちあふれていました。

さあ、あなたも一歩を踏み出してみませんか?

恋は「落ちる」ものだと思われがちですが、必ずしもそうではありません。特に、人生を共にするパートナーとの愛は、ゆっくりと時間をかけて「育んでいく」ものも多いのです。

「ピンとこない」という感情は、決して「終わり」のサインではありません。それは、あなたの心がまだ相手の本当の魅力に気づいていない、いわば「伸びしろ」のサインです。

完璧な出会いなど、どこにもありません。大切なのは、不完全な出会いの中から、関係性を育んでいこうとする意志です。

今、あなたの目の前にいる「悪くないけど、ピンとこない」あの人。 もう一度だけ、会う時間を作ってみませんか? あと2回だけ、チャンスをあげてみませんか?

3回会ってみて、それでも心が動かない。むしろマイナスの感情が芽生えてしまったなら、その時は迷わず、新しい出会いを探しましょう。その経験は、決して無駄にはなりません。

しかし、もしその3回目が、あなたの人生を永遠に変える、運命のターニングポイントになったとしたら?

一歩踏み出す勇気が、あなたの未来を大きく変えるかもしれません。 もし判断に迷ったり、一人で悩んでしまったりしたときは、婚活テラスの結婚相談所にご相談ください。あなたの幸せへの道を、全力でサポートします。

結婚相談所MA-REER SUPPORT
木下 正樹
https://mareersupport.com/